2008/12/03

Knowing the Bay Area

JTPAのシリコンバレー・カンファレンスも募集期間が残り1ヶ月を切った。会場も決まり、当日に向けての期待が高まってきている。ここでついでにベイエリアの地理についてちょっと書いてみたい。もちろんGoogle Mapなりでみてみれば一目瞭然のこともかなりあると思うが。

アメリカの西海岸の海岸線は南からカリフォルニア、オレゴン、ワシントンの3州で占められている。カリフォルニアが大雑把に南半分くらい。南はメキシコ、北はカナダだ。
カリフォルニアと国境を接するメキシコ側の都市はティファナ。メキシコの関税特区政策マキラドーラとNAFTAのおかげで多くの製造業が工場を構えている。日本メーカーも少なくない。
国境のアメリカ側はサンディエゴだ。無線通信のQUALCOMなどが有名だが、今パナソニックとの合併話が取りざたされているサンヨーやソニーなど日本メーカーも北米拠点を構えたりしている。ティファナへの地の利も影響しているだろう。
サンディエゴから北上してキャンプ・ペンデルトンを越えると広義のロサンゼルス・エリアだ。実際日本人に馴染み深いディズニーランドがあるアナハイムを要するオレンジ郡、北側のベンチュラ郡、などをひっくるめてLAエリアとしてアメリカ人にも捕らえられていると思う。もちろんロス、とは言わない。ここは映画の都ハリウッドもあればテクノロジー企業もたくさん集まっている。日本の自動車メーカーは輸出の受け入れもあってこのエリアに大抵主要拠点を構えている。ここが南カリフォルニアの都だ。
LAさらに北上するとサンタバーバラにたどり着く。青色ダイオードで有名な中村教授のいるUCSBもある。のどかな町で地図上は意外と大きな軍施設が目立つ。産業は...よく知らない。
そこから北上していくとしばらく大都市にはあたらない。バンデンバーグ空軍基地を過ぎ、いくつかの海沿いの町を過ぎてロス・パドレス国立公園を過ぎるとモンテレー湾にいたる。湾の南側はモンテレー、北側はサンタクルーズだ。ここはすでにベイエリアの衛星都市圏という雰囲気だ。ハイテク企業も結構ある。LINUXをめぐって裁判を起こしたSCOもサンタクルーズだった。
サンタクルーズから北への海沿いは日本で言えば伊豆のような崖に沿ったワインディング・ロードが続く。モンテレー・サンタクルーズからベイエリアに行くには内陸の高速道路を使うの一般的だろう。1時間足らずでベイエリアのサンタクララ郡に着く。
サンフランシスコ湾の入り口は狭く、中の南北に長く伸びた南側がサンフランシスコ湾、北側がサンパブロ湾だ。ここがカリフォルニアの海岸線で言えば大体下から3分の2くらいだ。サンディエゴからサンフランシスコまでスペイン王の力で作られた街道エルカミノレアル(王の道)がフランシスコ修道会の修道院をつないだのがカリフォルニアの主要な交通路の礎だといえる。ベイエリアの詳細は後回しにして更に北に進むとあとはオレゴン、ワシントンの海岸線にもずっと大都市はない。修道会から町が始まったことを反映しているのだろう。アメリカの州間高速網の一番西を南北に走る5号線はサンフランシスコ湾の東を通り、海岸線からは数10km離れたまま北上を続ける。
途中の主要都市といえばオレゴン州ポートランド。IT業界ではインテルの開発拠点も在ったりする。行ったことはないが大都会、ではないらしい。
ワシントン州を突き抜けていくとカナダとの国境を隔ててから南に入り組んできたリアス式の湾の東側にシアトルはある。言わずと知れたマイクロソフトの本拠地だ。任天堂アメリカの本拠地でもある。
湾の北のカナダ側はブリティッシュコロンビア州。北部西海岸最大の都市バンクーバーがある。バンクーバーは大量の輸出資源を抱えるカナダ最大の貿易港でもある。ハイテク業界も発達しており、カナダ最高の住居コストもあってベイエリアと比較されることも多い。ビデオゲーム業界最大手パブリッシャー、エレクトロニックアーツが世界最大の開発拠点を構えてもいる。

さて、ようやくベイエリアに話を戻そう。英語圏に他にベイはいくらもあるだろうが、ベイエリアといえばサンフランシスコ・ベイエリアの事だ。
サンフランシスコ湾の入り口に掛けられているのがゴールデンゲート・ブリッジだ。ゴールデンゲートという名前はトルコのイスタンブール、古のコンスタンチノープルから着ているのだとか。湾には他に4つの橋が架かっている。湾の北側から東へかかるリッチモンド・ブリッジ、
湾の南側を東西の横切る橋が北からベイブリッジ、サンマテオ・ブリッジ、ダンバートン・ブリッジだ。
ベイエリアの中心はやはりサンフランシスコ。ベイリアでシティといえばサンフランシスコの事だ。だが面積的にはベイエリアの多くを占めているわけではない。サンフランシスコは行政的に言えば市であり郡でもある。ここが北カリフォルニアの都だ。
湾の北側のマリン郡は高級住宅地としても知られるが、人口密度は低い。その北は太平洋岸がソノマ郡、内陸側がナパ郡、どちらもワインで有名な農業地域だ。サンパブロ湾の東側は河がが流れ込んでおり、北がソラノ郡、南がコントラコスタ郡だ。
南北に長いサンフランシスコ湾には大型河川は流れ込んでいない。西側の半島の北端がサンフランシスコで東岸はその通り、イーストベイと通称される。コントラコスタ郡の南側はアラメダ郡だ。
オークランド、バークレーのあるアラメダ郡はサンフランシスコとはまた少し違った雰囲気らしいが、あいにくまだほとんど行った事がない。ベイエリア3大空港のひとつオークランド国際空港(OAK)はここだ。もちろんUCバークレーがあり、テクノロジー企業も多く存在する。内陸の方には高エネルギー物理学やスーパーコンピュータで知られるローレンス・リバモア研究所がある。
湾の西側に戻ると、サンフランシスコの南側はサンマテオ郡だ。ここら辺のエリアの通称はペニンスラ(半島)。サンフランシスコから半島の湾沿いを高速国道101号線(ワン・オー・ワン)が南北に走っている。道の混み具合にもよるが101号線を30分ほど走ったところにサンフランシスコ国際空港(SFO)がある。実はサンフランシスコ国際空港はサンフランシスコにはない。サンマテオ郡サウスサンフランシスコ市にあるのだ。101を南下していくとサンブルーノ、ミルブレー、バーリンゲーム、サンマテオ市と続く。サンマテオ・ブリッジがかかっている袂はフォスターシティ。ベルモント、サンカルロスの次、レッドウッドシティはオラクルの本拠地として有名。エレクトロニックアーツの本社もここだ。アサートン、メンロパークは高級住宅街。サンマテオ郡の産業では総じて金融サービス系とそれに関連するIT企業が多い気がする。
その南がサンタクララ郡。ここがまさにシリコンバレーと呼ぶべきエリアだろう。
ちょうど郡の境あたりにパロアルト市はあり、あまり治安がよくないことで知られるイーストパロアルト市は実はサンマテオ郡だ。スタンフォード大学は実はどこの市にも属していない。スタンフォードで独立しているのだ。
101を南下し続けるとベイが途切れるあたりでマウンテンビューになる。Googleのあるところだ。左にNASAのジェット推進研究所のあるモフェット空軍基地が見える。更に進むと101は東に曲がっていき、サンーベール、サンタクララと続く。もうハイテク企業の名前を上げていくのも馬鹿らしい感じだ。
そしてサンノゼ。サンノゼ国際空港(SJC)は101のすぐ南だ。そこを少し過ぎた空港の南東側のエリアがダウンタウン。会場のSJSUはダウンタウンの南に位置する。
サンフランシスコからサンノゼまで101の西側を、旧道であるエルカミノレアルはずっと併走している。101を降りてエルカミノレアルにあたっとところが大体ダウンタウンや繁華街だ。
日本からベイエリアへ飛行機でアプローチすることを考えると、成田から今直行便が飛んでいるのはSFOだけのようだ。乗換えをすればSJCから入ったほうがサンノゼだけを考えたらだいぶ近い。
SFOからサンノゼへは車なら前述の通り101一本だが、公共交通機関を利用するならBART、CALTRAIN、VTAを乗り継ぐことになると思う。どちらかというとタクシーやシャトルを利用した方が快適ではないかと思う。もちろん少々高くつくかもしれないが。
どういう計画を立ててカンファレンスに参加するにしても、カンファレンスだけでなく、アメリカ特にベイエリアの暮らしぶりを肌で感じて行くつもりでできる限りゆとりを持った予定でいろいろなところを見ていくのが良いと思う。

2008/12/02

The 10000ft Overview of history of the media

送り手と受け手の関係からメディアの歴史をすごく俯瞰した興味深い記事。
小寺信良の現象試考:「一億総クリエイター」という勘違いに至る道のり (1/3) - ITmedia +D LifeStyle via kwout

でも重要なポイントがちょっとだけ触れられているのに結論に結びついていない。
記録メディアは娯楽の送り手と受けての空間と時間を分離した。だがラジオやテレビの放送は当初「生」だったため、空間の分離はもたらしたが時間は分離しなかった。
空間の分離の本質はとは受け手が送り手を見たり聞いたり感じることができるが、送り手には受け手が感じ取れない、というところにある。これは共有する場の分離だ。
それでも生放送の番組中で視聴者の葉書を読んだり、電話で話したりするラジオやテレビ番組が絶えないのはそこに受け手が送り手に感じ捉える感覚を生み出す効果があるからだ。つまりマスメディアである以上情報量の非対称は避けられないが、擬似的に受け手側から送り手側に情報を送り返すことができることによって擬似的に空間を越えて共有される場を作り出しているからだ。
マスメディアには冷たい匂いが付きまとう。人は所詮感覚の動物であり、高度に発達した表現技術は受け手に送り手が思うような感情や衝動を引き起こすことすら可能である。ナチスドイツの宣伝政策などを思い起こせば、そしてそれを一方的に大勢に送りつけることにはどうしても人間に本能的な警戒心を引き起こすだろう。
共有されている場には受け手にも参加している感覚があり、これがコミュニティとしての一体感を醸成する。より原始的な娯楽に近い感覚があるのだ。双方向性を持ち始めたメディアは空間や少々の時間すらも越えて場を形成することを可能にしている。これは実は原始時代からあまり変わっていない人間の共有される場での娯楽への回帰といえるかもしれない。
そう、売り物にはならない。そしてアンコントローラブルだ。そして参加者がコミュニティへの一体感、帰属意識を持っていることは別に良いことばかりではない。ここでは同調圧力、コミュニティ内の序列の生成、そして集団ヒステリーなどコミュニティが持ちうるあらゆる問題がバーチャルに再現されているのだ。メディアの性質によって増幅される部分もある。生まれたばかりの擬似的なコミュニティは現実世界のコミュニティと重層的に存在し、そこからかかる絶え間ない摩擦によるストレスが不安定さに輪をかける側面もある。
小寺氏はプロのメディアクリエイターとしてビジネスの視点でメディアの発展を観察しているのだと思うが、今の新しいメディアのあり方は予測はつかないが納得はいくものだと思う。メディア技術の進展が送り手と受けての関係をどう変えていくのか、実に興味深い。